2018年3月4日日曜日

バウレの筬

あやさんから、
「益子の佳乃やで、「美しきものたち」という、おもしろい展示会やってますよ」
と連絡をもらって見に行ってきました。
おもにはアフリカと日本、そしてほんのちょっぴりのアジアやヨーロッパの古い、木工品、焼きもの、織りものなどが、素敵な品ぞろえで並んでいました。
アフリカは、とくにエチオピアの木工が、コーヒーテーブル、鉢、枕など充実していました。直径80センチもあるようなインジェラ(クレープのようなもの)を乗せるテーブルは、それはそれは素晴らしいものでした。でも、そんな大木には神が宿っていたのではないかと、ちょっぴり恐ろしさを感じました。

あれも素敵、これもいいですが、原則、もうものは増やさないと決めています。それでも、素敵なものに出逢ってしまうと、わりと簡単に破られてしまうのが原則。別れ難いものたちを手にして、嬉々として戻ってきました。


その一つ、西アフリカ、コートジボワールに住むバウレ人の、織りものの道具の筬(おさ)です。


とは、布を織るとき、張った経糸(たていと)に緯糸(よこいと)を通した後、それを均等に締めるために使う道具です。
西アフリカでは布を幅広に織らないで、8センチくらいから12センチくらいまで細いテープ状に織り、それをつなぎ合わせて、大きな布にします。だから、筬の幅がこれだけあれば、十分なのです。


たぶん葦でできているこの部分が、筬の筬たる部分です。
薄い板状のものを並べてありますが、最初からよく磨かれているのか、あるいは使い込まれたのか、すべすべと、とてもなめらかになっています。

布は世界中で織られていますが、布のきめの細かさを左右するのは、じつは「織り」の技術ではなく、筬の材料にあります。
アジアには竹があったために、薄くて目の詰まった筬をつくることができました。でも、アフリカ(東アフリカの一部を除く)や、ヨーロッパ、アメリカなどには竹がないので、ほかのものでつくりました。


筬の下の部分を挟んで留めてあるのは、ソルガムのような雑穀か、葦の茎ではないかと思われます。押してみると、中心部はちょっとスポンジ状になっています。 

この筬では、ベンガル地方に見られるような、細い糸で、しかも目の詰んだ薄手の布を織ることはできませんが、下に敷いてある、手紡ぎの木綿糸を織るには十分です。


持つところは、思い切って太くしてあります。
太い方が持ちやすく、また重量があるので使いやすかったに違いありません。


これは、バウレではなくて、マリのドゴンの織り機ですが、筬には紐をつけて上から吊ってあります。


ところがこの、バウレの筬には吊るところがありません。
ただ、経糸に通しておいたものだとおもわれます。とすると、ドゴンの機のように手前を固定せず、自分の身体にくくりつけて経糸を張っていたのかもしれませんが、はっきりしたことはわかりません。


ネットでバウレの織りものをさがしてみると、ありました。実物を手にしていないので断定できませんが、絣に見えます。
バウレの織り機全体も見たいものです。

前に、何度か書いた記憶がありますが、アフリカでは、織りものは男の仕事です。
アジアと違って、職業の分担は事細かく分かれていて、それを超えることはありません。
男が織った手織り布を、市場で商うのも男の仕事ですが、工場製の布を商うのは女の仕事です。





2 件のコメント:

hiyoco さんのコメント...

うわ~、この筬に糸を通す作業が大変ですねー。この棒の細さで布のきめ細やかさが決まるのですね。とてもきれいな道具ですね!

さんのコメント...

hiyocoさん
きれいな道具でしょう。うっとりします(^^♪

糸通しは、織りものの基礎の基礎です(笑)。
簡単に言えば、かぎ針みたいなのを突っ込んで糸をかけて引き出せばいいのだけれど、糸だけで通してもそう難しいものではありません(笑)。
あと、一度通したら、織ったあと糸をそのまま残しておいて、次はそれに結んで引っ張るという手もあります。何百本とか千本以上の糸通しに比べると、細い西アフリカの織りものは楽ですが、織りものは織り機に経糸を掛けたら八割がたできたという感じがあります。