2017年6月11日日曜日

地下足袋

その昔、都心の地下鉄の改札口の付近で、渋い着物にたっつけ袴、それに袖なしを羽織った初老の男性を、見かけたことがありました。
「かっこいいなぁ」
と見ていて、ふと足元に目をやると、見たことのない履物をはいていました。思わず追いかけて、声をかけ、それがつま先の割れていない地下足袋だと知りました。
当時はネットショップなどありませんから、ホームセンターを回り、つま先の丸い、黒い地下足袋を見つけ、以後、ずいぶん愛用したものでした。
その地下足袋で海外出張に行ったこともあり、タイの農民たちに頼まれて、たくさんの地下足袋を、何度か届けたこともありました。
 
さて、ブログ友のShigeさんのブログで、浜辺に漂着した地下足袋が紹介されていました。
それを見て気がついたのは、世の中では、地下足袋を知らない人、地下足袋を履いたことがない人、地下足袋を履いた人を見たことのない人たちが、マジョリティーだということでした。
 「ひぇぇぇぇ」
地下足袋を当たり前に履いている、農家さん、きこりさん、瓦屋さんたちは、八郷ではマジョリティーでも、日本全体で見れば、堂々たるマイノリティだったのです。


この地下足袋は、カンボジアに赴任するときだったか、元同僚のH.Kさんにいただいたものです。
普通の地下足袋は黒い木綿ですが、これは藍染めの木綿を使っています。

 
つま先、かかとなどの補強した部分も、通常はゴム引きにしますが、これは厚手の藍木綿を使っているだけです。
 

七枚小鉤(こはぜ)。


二、三度履いたでしょうか。
あまり美しいので、履きつぶすのがもったいなくなり、履くのをやめてしまいました。
 

履いてみると、なぜか親指が大きくつくられていて、親指の外は、ずいぶん余っています。
草鞋同様、地下足袋を履くと、裸足の時より足が軽い感じがします。
 
ここに来てから、十年ほど田んぼをつくりましたが、水の入った田んぼに入る時は、ただの地下足袋ではなくて、柔らかくて薄いゴムでできた、ひざ上まである長靴型の地下足袋を使っていました。
指先が分かれているのといないのでは、田の中で踏ん張れる度合いが違うのです。


ところで、SOU・SOUというお店では、素敵な地下足袋をいろいろ売っています(高いけど)。
まぁ、八郷の地下足袋率の高さを思えば、簡単には消えてなくならないと思いますが、地下足袋を必要とするような社会が、いつまでも続いたらいいなと思います。








6 件のコメント:

昭ちゃん さんのコメント...

炭鉱で20年閉山後20年のうち高所作業では
足場の感覚がじかに伝わる地下足袋が一番です。
でも溶接では安全靴とそれぞれ使いわけて、、、
 地下足袋の通気性も大事な要素で
安全靴になって水虫になった人も多いですよ。 

NANAO さんのコメント...

僕も20年前は家具じゃなくて土木の木型を作る職人だったので、鳶服に地下足袋でした。
革の足袋や、防水のものもあったり、様々ですね。
軽くて良いのですが、コンクリの上で作業すると慣れるまで足が攣りそうになることと、釘を踏み抜いて大怪我する人が多いです。

なので安全面(安全靴着用、ヘルメット着用、安全帯着用義務)から今はゼネコンの大きな現場では使えないことが多いのかもしれません。

さんのコメント...

昭ちゃん
あの、靴底の下の地面が感じられるっていうのは、独特の感じですよね。地下足袋になれると、防水登山靴などで、どこを歩いても何の変化も伝わってこないというのは、かえって不安になってしまいます。
かくゆう私、サラワクの熱帯林を歩くために、高い防水加工の登山靴を買い、11時間歩いたのですが、せせらぎを渡るとき靴に水が入り、最初のうちは脱いで水を出していたのですが、だんだんそうもいかなくなり、ちゃぷちゃぷ音を立てながら気持ち悪く歩き、着いて靴を脱いだら、足が膨張して白くふやけていたことがありました(笑)。地下足袋で行こうか迷ったんですけどね。大失敗。
タイなど高温多湿のところでは、地下足袋は最適です。もっとも、彼らはゴム草履で山登ったりするけれど...。

さんのコメント...

NANAOさん
釘を踏むというのは、避けられないというか、避けなくてはいけないというか、地下足袋の「敵」ではありますよね。
私は、作業するとき、地下足袋ではなくてつま先だけ金属でカバーしている、簡易安全靴を履いていますが、底は弱いので、そこいらに釘の出たものを置かないようにしています。
安全とか、厳しく言われ過ぎですね。大工さんたちも、棟上げくらいにはヘルメットをかぶっているけれど、一日くらいか(笑)、あとはやっていられないという感じです。瓦屋さんに至っては、帽子もかぶっていない人が大勢いました。
目がくらむような高いところで作業した時は、安全ベルトを足場につないで使いましたが、やっぱり安心でした。
あの鳶服というのですか、ニッカボッカの裾が広すぎるのはかえって引っかかりやすいんじゃないかと心配ですが、足はらくちんそうですね。

あかずきん さんのコメント...

早朝の砂浜に地下足袋?足先が二つに分かれた足跡が・・笑
親指の所がより深く窪んでシッカリ歩いている感があります
不思議な足跡です^^
履物へのこだわりって興味深いですね~

さんのコメント...

あかずきんさん
砂浜を地下足袋で歩いていた人がいたんですか?砂浜に着いた地下足袋の足跡を見るなんて、超珍しいじゃないですか(笑)。
昭ちゃんは地下足袋を沢登りに使ったというから、山で、熊の足跡と並んだ親指のくぼんだ足跡を見た方が、珍しくないかもしれません。
地下足袋の発明は、まさに地下の足袋ですが、高いところに上ってヒノキ林の枝打ちなんて場合は、履物は地下足袋以外、考えようがないですね。