2014年11月22日土曜日

こね鉢づくり



Kさんから、こね鉢をいただいきました。
Kさんの親戚の仏像を彫っている方がつくられたもので、イチョウの木製、直径は一尺五寸(46センチ)ほどあります。


外側は、彫り跡が見えるよう、削り取ってつくってあります。


そして内側はとても滑らかに見えますが、よく見ると刃物の跡があります。
「生木を彫るのでしょうか?」
「さあ...」
Kさんもご存じないようでした。

  
後日、『アンギンと釜神さま-秋山郷のくらしと民具』(滝沢秀一著、国書刊行会、1990年)に、こね鉢のつくり方の図解や写真が載っていたのを思い出し、開いてみました。

『アンギンと釜神さま』は、著者の滝沢さんが、新潟県と長野県にまたがる、秋山郷の暮しを、足で歩いて聞き取った話と、集めた民具で綴った興味深い本です。


内側は、ハチヂョウナ(鉢手斧)で荒削りした後、マエガンナで仕上げると書いてあります。いただいたこね鉢の彫り跡は、ちょっとカーブしていましたので、秋山郷のマエガンナと同じような道具を使ったのではないかと思われます。

山間で、木が豊富にあった秋山郷では、各種こね鉢の他に、いろいろなものを木でつくっていました。こね鉢の材料はトチノキです。トチは食料の木としても大切な木でしたが、以前は山にたくさん自生していたようでした。


鉢のつくり方は図の通りですが、原木を切り倒したら、その場で玉切りにします。
玉切りにした木は、くさびを打ち込んで、芯の部分を除いて、二つ割り、ごく太いものは三つ割りにします。そして底を平らにして、鉢の厚みを決めます。


鉢の直径を決めて、ブンマタを回して、外円と内円を描きます。


まさかりで内を彫り、外を削り、軽くしてから家に運びます。
よい原木だと、一本の木から鉢が70枚も取れたそうです。
いつ頃の写真なのか、後ろにスチール(ドイツ製)のチェーンソーが見えるところが面白いところです。もちろん、生活のためにつくっていた頃はすべて手鋸を使っていました。


仕上げは家でやりました。
仕上げたあとに乾燥させている写真があるので、荒取のときは生木、仕上げの時は半乾き、そして仕上げたあとに乾燥させたようです。
これらの写真は、夏の服装ですが、もともとは冬場に、雪の中でつくったようです。

Kさんにお願いして、できれば仏師さんに、鉢つくりの現場や道具を、見せていただきたいものだと思っています。





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