2011年11月9日水曜日

川崎毅の陶筐(二)





以前、10年ほど、川崎毅さんと、近くに住んでいたことがありました。
私鉄で駅一つの距離だったので、よく行ったり来たりしていました。




川崎さんは自分で家を建てましたが、その気持ちいい仕事場で、いつも重い土と遊んでいました。
大きな土の塊をぱんぱん叩いて、いつまでも叩いて、そして削って外の形をつくります。
大体の形ができたら、蓋と身の部分に切り分け、中を少しずつ削ります。




できたものは焼かれ、釉薬をかけてまた焼かれ、絵つけをしてまた焼かれました。




しっかり叩いていても、中には焼き上がるとひびが入っているものもありました。
一年につくる量は、他の陶芸家さんに比べると、ずっと少ないのではないかと思います。もっとも、個人差は大きいと思いますが。




「伝統工芸展を目指すなら、自転車や椅子など描いていたらだめだ」
と恩師に言われたと苦笑していましたが、気にもしないで、わが道を行っていました。




私は、個展やときどきは川崎家で見せてもらった作品を、年二、三度手に入れるのを無上の楽しみにしていましたが、やがて年月を経て、作品は大きいものになり、まったく手の届かないものになってしまいました。




蓋と身を合わせる部分に注目してみると、すべて蓋が凸になっていて、身が凹になっているのに気づきます。




こんな部分に、こだわってつくっていた川崎さんの作陶姿を思い出します。





2 件のコメント:

hana-ikada さんのコメント...

素敵な作品ばかりですね~
木や鳥や魚のモチーフは好きなので
作品を拝見しているとほんわかした気分になります。
展示会の写真の作品も洋風っぽさもあって、いろいろな味わい方ができそうです。
時々障害者の方の陶芸プログラムのお手伝いをしているんですが、土の塊をバンバン叩くと怖がる方もいて「思いっきり叩いた方が土は喜ぶんだよ~」なんてハッタリ言ってます(笑)

さんのコメント...

hana-ikadaさん
いいでしょう!
洋風、和風、アジア風なんてくくれないものが一番面白いと思いません?

川崎さんは家に貼りついていて、散歩にさえ行かない(?)人ですが、一時期、ベツレヘムの旧市街のような、イスラム世界の迷路のような作品をつくっていたことがありました。
その中に入って行きたい感じでした。でも高すぎて、逆立ちしても手も足も出ません。どうせ、飛ぶようには売れないで、家の場所ふさぎをしているだろうから、あとで訪問して、泣き落として手に入れることも考えましたが(笑)、それっきり十数年経ってしまいました。

土は、確かに長い間叩いたり、こねたりしてやった方が嬉しがるのではないでしょうか。