2011年11月7日月曜日

乾漆の箱



繁華街からは遠い川沿いに、プノンペンで唯一の高級骨董屋さんがありました。
前をよく散歩していて見つけたのですが、いつも閉まっていました。
プノンペンに三年住んでいて、開いていたのに出くわしたのもわずかなら、中に入ってみたのはほんの二回ほどでした。

誰を相手に商売していたのでしょう?
今考えると、外国人観光客も含めて、店を訪れる人などはまったく相手にせず、お金持ちのところに出張販売していた骨董屋さんだったのでしょう。

間口が狭く、二階になっているお店の中には、骨董市場に並んでいるようなものは一つもなくて、異次元のものが並んでいました。
たとえば、古い中国の手の込んだ箪笥や床机、フィリピン沖の沈没船から引き上げられた、明時代の大皿などなど、美術書には載っているけれど、実際には目にしたことのないような、端から端まで素晴らしいものばかりでした。




そんなお店に並んでいた、商品の中では飛び抜けて安い箱を一度だけ買いました。
100ドルくらいでした。




たぶん乾漆づくりです。
乾漆とは、仏像をつくったりする方法で、木型に布などを貼り、それを漆で固めてつくります。

蓋が重くて、そのままではひっくり返ってしまいますが、ほんの軽いものでも入れると、ひっくり返らなくなります。




箱の上に描かれた絵は擦り切れて、ほとんど消えかかっています。




それでも、残っている部分から、竜が描かれていたのではないかと思われます。




金具は、かわいいものでしたが、




いくつか、金具を箱に留めている釘がなくなっていて、ぐらぐらしていました。

そこは、プノンペン暮らしのいいところ、骨董市場の近くのアクセサリーもつくっているお土産物屋さんに持って行ったら、飾り釘を見繕って、造作なく修繕してくれました。
しかも、修理のお値段は2ドルくらいだったでしょうか。





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