2011年1月10日月曜日

肩に鉈、腰に鉈


タイ、ラオス、カンボジア、マレーシアなどの、村の男たちは、森へ行くときだけでなく、田んぼに行くときも、鉈のような刃物を持っていきます。

森の中では、木の枝を切ったり、薪を集めたりするのに使い、田んぼでは、草を払ったり、ときには包丁として使ったりもします。

鉈は、外出の必需品です。




マレーシアのサラワクで、舟で訪ねた川沿いの村から11時間歩いて、移動民の住んでいる熱帯林の中に行ったことがありました。
そのとき、案内してくれた人が、歩くのに邪魔な木を切るだけでなく、要所要所で鉈を使って、若木の先を切ったり、枝を曲げたりして、「印し」をつけながら歩くのを見ました。
帰りのための道しるべというより、「誰々がいつここを通った」というサインのようでした。

このサインは、時間を印さなくても、葉っぱの枯れ具合を見て、つぎに通る人が、誰がいつ歩いたか読めるのです。案内してくれた人たちも、印しをつけるだけでなく、あちこちで他の人のサインを、見逃さないように読んでいました。


モダマの蔓を切って水を飲む

熱帯林の中では、喉が渇いたら、鉈で太い蔓を切って、その中からぽたぽたとたれてくる水を飲みます。水辺のほとりでは、太い太い竹を切ったら、その中にきれいな水が溜まっていたのには、びっくりしました。とても美味しい水でした。
でも、どうして竹の節の中に水が溜まっているのでしょう?

サラワクの人たちは、長距離を歩くからか、腰には柄の短い鉈を携帯していました。




それに比べると、タイ、ラオス、カンボジアなどの鉈は柄が長くて重いものです。
ヴィエンチャンの近郊で、スッピンさんの担いでいるのが、このあたりの鉈です。




これはカンボジアの鉈ですが、ラオスのスッピンさんが持っているのと形が同じです。柄が長く、刃は後ろの方にぐっと反っています。
柄が長いのは、柄の先を持って使うと、重さが加わり、威力が大きくなるからでしょうか。ちょっとした小屋を建てるくらいの太さの木は、これで切ってしまいます。
また、太い木や竹を切るだけでなく、漁具や竹籠を編むためのひごをつくるなど、細かい作業にも、この鉈を使います。

この鉈は、プノンペンの近郊の村の、伝統医療師のチュクリさんに、新品の鉈と、彼の使い込んだ鉈と、交換していただいたものです。チュクリさんは採集したり、育てたりした薬草・薬木を細かく刻むのに、この鉈を毎日使っていました。




ラタンの柄がついていますが、刃を留めてある金属は、水道管のようなものでしょうか。
ただ留めるだけでなく、細いのを二本配して、装飾にしているところが、カンボジア人らしいところです。




刃物の背の先には、尖った飾りがついています。
「飾りじゃないよ、これが大切なんだ」と、もと同僚のナリンさんが言っていたのは覚えていますが、なぜ大切だったか、聞きそびれたような気がします。

たぶん、森で蔓草にひっかけて取り払うとか、錐の代わりに、穴あけに使うとか、いろいろ使い道があるのでしょう。
私もこの鉈を時々使っていますが、まだこの尖ったところを使ったことはありません。



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