2009年11月19日木曜日

屋根鳩



我が家の屋根の一番高い棟瓦の両側に、瓦でできた鳩が乗っています。

鳩を手に入れたのは、将来、瓦葺きの屋根の家に住むことがあるとは夢にも思わなかった、1970年代のことでした。長男が小学校に入学して新しい友だちができ、近くに住むMちゃんがお母さんと一緒に我が家に初めて遊びに来たときのことだと思います。
学生時代から集めていた、土人形を飾ってあるのを見て、Mちゃんのお母さんが、「瓦屋さんに鳩があったわよ」と、唐突に言いました。どうしてMちゃんのお母さんが瓦屋さんに行ったのか、なぜ私の土人形を見て、鳩を思い出したのかなどは知る由もありませんが、私は、さっそく教えてもらった瓦屋さんに行ってみました。「鳩があるんですって?見せてください」。
瓦屋さんは、注文した人が取りに来なかったと、しきりに文句を言います。ずいぶん腹が立っているみたいでした。
つがいの鳩はなかなかよくできていました。私は当時はコンクリートの四角い家に住んでいたのですが、鳩をゆずってもらい、我が家に連れてきました。

以後、鳩は何度かの引越しにつきあい、地味に光りながら飾り棚の一部を陣取っていましたが、八郷に来て、いぶし瓦の家を建てることが決まったとき、もともと約束されている場所である屋根の上に乗ってもらうことになりました。
失敗したのは、写真を撮っておかなかったことです。今では遠すぎて、かわいい表情を見ることができません。




他の人はどうか知りませんが、私は屋根の上に何かが乗っていると和みます。昔、山手線の目白駅の近くでしょうか。電車から、屋根に本物と見まがう猫と犬がにらみ合っているような飾りを乗せた家が見えました。
奈良の法隆寺の山門の前の建物には、数羽のスズメ飾りが乗っていたような記憶もあります。
八郷のあたりの農家にも、恵比寿大黒や波(火事除け)を乗せている家があります。ただ、しゃちほこだけは大の苦手です。

カンボジアの農家は瓦葺きですが、地方によって、建設した年を透かし彫りにした薄いコンクリート板や、飛んでいるウサギなどの装飾を、切妻の屋根の真ん中に乗せた家がぽつぽつとあります。ちょっとユーモラスで、すてきでした。

また、1981年に中国の上海を訪れたときには、上海郊外で、アマリリスの鉢植えのような装飾を切妻屋根の両側に乗せた家や、数匹の動物を方形屋根の軒先近くに並べて乗せた家をたくさん見ました。それらは車で走っているときに車窓から見えるだけで、「ちょっと停まってください」、とお願いしても、ぜったい停まってくれませんでした。
まだ、みんな人民服を着て、車もほとんど走ってない時代でした。どこへ行くにも、いつでも誰かがついてきて、長屋の立ち並ぶ古い小路に入ってみようとしたら、「だめです」と、身体を張って阻止されたこともありました。
あれから30年、あの美しかった屋根飾りは、きっととっくに姿を消してしまっていることでしょう。



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